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3.11取材報告:石のスープ

フリーランスのライターやジャーナリストがお届けする有料メールマガジン「石のスープ」。東日本大震災の取材報告を中心に、バラバラのフリーランサー達が集まって一つの媒体と作ると、どんな味に仕上がるでしょうか……

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渡部真【勝手気ままに】vol.9「隣りの記者が不当に排除されている」(2/3) 



週刊 石のスープ
定期号[2012年9月26日号/通巻No.42]

今号の執筆担当:渡部真

「隣りの記者が不当に排除されている」
(2/3)



→前ページ「隣りの記者が不当に排除されている」(1/3)に戻る←


■権力を監視する報道機関が、権力によって規制されている

 広聴広報課には、赤旗への説明の際、僕が前述した憲法違反という意識はなかったのだろうか? たぶん、なかったのだろう。憲法や民主主義など意識がないためうっかり口が滑ってしまったのか、つい本音がでてしまったのか、僕にはよくわからない。しかし、とりあえず、フリーランサーなどが「特定の主義主張」によって記者会見から排除されることはないということは確認された。
 それにしても、「特定の主義主張」を持たない記者なんているのだろうか? どの新聞も、毎日のように社説を掲載し、短文コラムを掲載しているが、そこは「特定の主義
主張」を発表する場として機能している。要するに、「原子力規制委員会として不都合な『特定の主義主張』は排除したい」という意識が、本心にはあるのだろう。規制委員会の最初の規制の仕事が、報道機関の規制というのは笑えない話だ。

 田中委員長の発言も頓珍漢なものだ。「政治からの独立」というが、政党機関紙の記者が、公開の会議を見学し、記者会見で質問をすると、政治の介入になるのだろうか?どんだけ日本共産党を恐れているんだろう。赤旗の記者が会見で質問したくらいで行政や官僚が動くようなら、もうちょっとまともな原子力行政だったことだろう。

 さて、ここで、前述したように、政党機関誌は、会見への出席参加を認められるべきかどうかという点が問題になる。

 僕は断言するが、「政党機関紙だから」という理由で、官庁の記者会見に出席を認められないのは、どう考えてもおかしい。まったく合理性がない。行政が、合理性もないのに、憲法で認められた基本的人権に規制をするなど、あってはならないことだ。
 政党の機関誌が記者会見に出席して、仮に、記者会見の場で質問もせず、政治的な意見表明をくり返すようであれば、それは、そうしたケースを規則で問題にすればいいのであって、政党機関紙だからダメだという理由にはならない。


 原子力規制委員会は、第1回会議の決定事項として、「8.報道の体制について」という項目の中で、報道機関への情報提供を以下のように決めた。

*  *  *  *  *  *


1.原子力規制委員会の活動の透明性を高めるため、記者会見などを通じて、報道機関に情報を提供する。

2.記者会見等に参加を求める報道機関の範囲は次の通りとする。

(1)日本新聞協会会員、日本専門新聞協会会員、日本地方新聞協会会員、日本民間放送連盟会員、日本雑誌協会会員、日本インターネット報道協会会員、日本外国特派員協会(FCCJ)会員及び外国機者登録証保持者

(2)発行する媒体の目的、内容、実績等に照らし、上記いずれかに準ずると認め得る者

(3)上記メディアが発行する媒体に定期的に記事等を提供する者であって、その実績を認め得る者

 [※判定の方法]

〈1〉…当該団体への紹介、または登録証の確認による

〈2〉…発行媒体の目的・内容・実績の報告を求め、これらを証する資料の提出を求めて、準ずるか否かを判定する。

〈3〉…〈2〉と同様、これまでの実績の報告、及びこれを証する資料の提出を求めて判定する。

(以下略)

*  *  *  *  *  *


 これは、多くの官庁主催の記者会見で採用されている「参加基準」と、ほとんど同じ内容だ。3年前、外務省の記者会見の参加基準が決められた際の文言を踏襲している。

 僕も、この基準に沿って、原子力規制委員会の会見には出席できるようだし、昨年まであった原発事故に関する統合会見にも参加できていた。と同時に、同じような「参加基準」でも、外務省や官邸の記者会見では、僕の記者としての実績は認められず、参加することはできない。

 これが何を意味しているのかーー。
 つまり、会見を主催する権力機構の意志によって、同じ人間を、ある会見では出席を認め、ある会見では出席を認めないということが起こり得ているということだ。
 権力を監視すべき報道機関が、権力によって取材や質問の機会を規制されている。こんな馬鹿馬鹿しいことがあるだろうか。

 この数年、あらゆる官庁主催の記者会見で、この「参加基準」の合理性について質問をくり返してきたが、ただの一度も合理的な返答をした官庁はない。
 「記者会見等に参加を求める報道機関の範囲は次の通り」と書かれているが、ここでは参加できる「範囲」を示しているのだ。記者会見に不適当な行為や記者の規則ではなく、記者会見に参加することを権力機構が公認する範囲を限定しているということだ。
 例えば、「包丁を持って振りかざすような行為をする記者は、会見に参加できません」というなら話はわかる。しかし、官庁の示す「参加基準」は、そうじゃない。「こういう人“だけ”が、記者会見に入ることを認められます」と言っているのだ。最初から、報道機関を限定し、情報公開を規制するために存在している。

 情報公開、パブリックアクセスの権利、取材・報道の自由の観点から言えば、まったくもって合理性のないのが、この「参加基準」だ。

 これにより、「しんぶん赤旗」は、政党機関紙だからという理由で排除される。フリーランサーは、「実績が十分でない」という理由で排除される。その他にも、「週刊金曜日」などは、実績も十分であり、一般的な商業週刊誌であるにも関わらず、「雑協に加盟していない」という理由で排除されている。

 どれも、権力機構が自分勝手につくった合理性のない「参加基準」というルールを振りかざし、参加を認める記者を選んでいる結果だ。


■椅子以下の存在の叫びは、記者クラブ員には届かない

 数年前の話だ。2010年5月、僕は新聞研究集会(労連主催)を見に行った。シンポジウムの壇上には、司会の北村肇さん、パネリストの高田昌幸さん、神保哲生さんなど、僕が尊敬するジャーナリスト達が並んでいた。
 途中、司会の北村さんが、会見開放の実態について会場の記者達から意見を求めた。すると、会場にいた文科省クラブに属する新聞記者が発言した。「文科省クラブは、すでに開放済みというか、昔からオープンになっている」

 ところが、その年の春、僕は2回、文科省クラブから会見出席を断られてた。僕は教育誌などに記事を書いてるし、文科省と仕事もしてるし、その直前に文科省の副大臣に個別取材をしていた。しかし、会見参加を申し込んだところ、幹事社から断られた。
 会場には、偶然、フリーライターの畠山理仁さんも来ていた。畠山さんは、週刊誌に記事を書き続けている。あらゆる官庁会見に出ている。でも、民主党政権発足以降、その時まで半年に渡って文科省の会見参加を断られていた。
 僕は、会場で手をあげて発言し、文科省クラブのそうした実態を説明した。
 集会後、その記者さんが挨拶に来てくれた。
「おかしいなぁ?断らないはずなんだけど」
 そういって首を傾げ、クラブに帰って確認しますと、その記者は言った(今では、文科省の会見はほぼ完全にオープン化している)。

 たぶん、多くの記者クラブ所属の人達は、こんな感覚なんだろう。
 実際には幹事社の判断で断るような実態があっても、そんな事すら気づいていない。
 まぁ、そりゃ、僕や畠山さんが排除されたって、記者クラブに所属している記者の方々には痛くも痒くもない。まさに眼中ないわけだ。それは当然とも言えるだろう。
 そして、記者クラブの記者達のこの感覚は、ずっと変わらないんだと思う。

 今ではすっかり有名になって、大手新聞社の記者から挨拶にくるようになった畠山さんだが、当時は、記者クラブ所属の記者と挨拶する際、名刺交換を求めて自分の名刺を差し出しても、相手は名刺をくれなかったケースが多かった。
 ところが、記者会見場に行くと、椅子の上に大手記者の名刺が、何枚もおいてある。記者席を確保するため、名刺が置かれているのだった。しかも、同じ人の名刺がいくつもの席においてある。仲間の記者の席を確保するためだろう。
 それを見るたび、名刺をもらえない畠山さんは「自分は椅子以下の存在なんだ」と自覚したという。

 今でも、色んな取材現場で、椅子以下の存在の記者達が、権力機構から合理性のない排除を受けている。
 僕もまた、椅子以下の存在だ。椅子以下の存在が何度こんな事を書いても、ほとんど影響はないだろう。実際、この3年間、何度も同じようなことを書いたり発言したりしてきたが、まったく影響はなかった。
 僕などは、官庁の会見にほとんど参加していないので、それほど大きな被害を受けているわけではない。もっと酷い扱いをされている記者達は、それぞれの取材現場で椅子以下の存在とされ、不当に排除され、差別されていることを怒り、声をあげている。でも、記者クラブの記者達には届かない。

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■まだまだよろしくお願いします!
風化する光と影
〜“メディアから消えつつある震災”の中間報告

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渋井哲也、渡部真と、ジャーナリストの村上和巳さんの3人が、これまで東日本大震災で未だに記事に出来なかった様々なルポを約35篇書き下ろしました!
まだ終わっていない震災のなかでの暮らし、それでも明日への歩みが進んでいる。あの時、誰もが見つめた現実を、もう一度、しっかりと受け止めるために、災害の検証、原発問題、生活のなかで起きている問題、学校で暮らす子ども達、未来に向けた復興について、などのテーマに分けて構成されています。
メルマガ仲間の三宅勝久、「ときどき登場」の寺家将太さん、ジャーナリストの長岡義幸さん、記者会見ゲリラの畠山理仁さん、ジャーナリストの粥川準二さんも、寄稿してくました。友人の編集者が、僕らが儲かりもしないのに取材を続けてきたことに支援してくれ、まさに赤字覚悟で頑張って発行してくれました。何とぞ宜しくお願いします。



渡部真 わたべ・まこと
1967年、東京都生まれ。広告制作会社を経て、フリーランス編集者・ライターとなる。下町文化、映画、教育問題など、幅広い分野で取材を続け、編集中心に、執筆、撮影、デザインとプリプレス全般において様々な活動を展開。東日本大震災以降、東北各地で取材活動を続けている。
[Twitter] @craft_box
[ブログ] CRAFT BOX ブログ「節穴の目」



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